血管外科

(1) 対象疾患

血管外科では頚部、胸部、腹部、上肢、下肢の動脈・静脈・リンパ管に関係するあらゆる疾患を扱います。具体的には、胸部下行大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤、腹部大動脈瘤、その他の動脈瘤(内臓動脈瘤、四肢動脈瘤など)、閉塞性動脈硬化症(ASO)、バージャー病(TAO)、大動脈炎症候群、頚動脈狭窄、レイノー病、外傷性動脈閉塞、急性動脈閉塞、透析患者における内シャント不全、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、血管腫、動静脈奇形、リンパ浮腫などです。1日平均外来患者数は約40人、年間入院患者総数は約250人で、年間に腹部大動脈瘤約50例、閉塞性動脈硬化症約100例、下肢静脈瘤・シャント約60例と、多くの手術を施行しています。腹部大動脈瘤に対しては従来の開腹手術に加えて2009年よりステントグラフト治療を導入し、現在では約半数に同治療を施行しております。下肢静脈瘤に対しては2012年よりレーザー治療を開始いたしました。これらの新しい治療に対しては、十分な経験を持った医師の指導のもと、カンファランスによる議論を尽くした上で行っており、よりストレスの少ない、しかしより安全な治療となるよう努力しております。

(2) 診療体制

スタッフおよび助教を中心とした病棟チームにより安全な手術を心がけており、外来とも密に連携を保って診療を行っております。血管外科専門外来を月から金曜日まで毎日、予定手術を週に3日、救急手術を随時、血管撮影や血管無侵襲検査を週4日行っています。詳細は東大病院ホームページにも記載されておりますので、ご参照ください。
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/patient/depts/svs_md/index.html

(3) 先進・特殊医療

東京大学血管外科学教室はわが国でもっとも歴史があり、常に日本の血管外科をリードしてきました。現在も血管外科全般にわたり診療・研究を行い、多くの臨床実績をあげています。

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療

腹部大動脈瘤に対して、足の付け根(そけい部)の動脈から血管内の操作でステントグラフト<金属の補強(ステント)のついた人工血管(グラフト)>を留置する治療法です。傷は主にそけい部の二箇所(数cm程度)のみで、従来の腹部を大きく切開して人工血管を移植する開腹手術に比べて、侵襲(手術のストレス)が少ないことが特徴です。高齢の方、心臓や脳に持病がある方、呼吸器機能が悪い方、これまで腹部の手術を受けたことがある方なお、通常の開腹手術に伴う危険性が高い場合に良い適応となります。企業製造ステントグラフト2種(Zenith endovascular,Excluder)が平成18年に厚生労働省より使用承認され、平成19年に特定保険医療材料として認可されました(現在は5種)。ステントグラフト使用にあたっては、ステントグラフト実施基準管理委員会によって承認された実施医もしくは指導医によって、認定施設において行われなくてはなりません。(詳細はhttp://www.stentgraft.jp/index.htmをご参照ください。)当院はステントグラフト認定施設であるとともに、当科では実施医・指導医が在籍して全てのステントグラフト治療に携わります。

経皮的血管形成術(PTA)・金属ステント留置術

動脈や静脈の狭窄部をバルーンカテーテルで拡張したり、その部分に金属ステント(ステンレス製の網目状の筒)を挿入して改善する治療法です。一般の外科手術よりも低侵襲であり、患者さんの身体への負担が少なく、全身麻酔が不要、疼痛が少ない、入院期間が短いというような長所があります。

下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術

下肢静脈瘤に対して、レーザーで原因となっている血管を焼く治療法です。1cm弱程度の切開をおいて目立つ静脈瘤自体の切除を同時に行うこともあります。レーザー焼灼術は、従来の原因血管を抜きとるストリッピング術に比べて、傷が小さく、手術時間も短く、また術後すぐに歩行可能であるといった特徴を持っています。また抗血小板薬や抗凝固薬などの血をサラサラにする薬を内服されている方もリスクが少なく治療を受けて頂けます。当院は血管内レーザー焼灼術実施・管理委員会の実施施設認定をうけ、実施医の資格を持った医師が治療を行っています。

※当科で行っている臨床研究につきましては、こちらをご参照ください。