腫瘍外科・血管外科の研修について近年では外科領域においては専門化が進み、以前にも増して豊富な知識と高い技術水準が求められる時代になってきております。初期研修の段階から医師としての生涯教育体制ならびに指導体制がしっかり整っている病院を選択し、短期的な症例経験のみを追い求めることなく、長期的な自分自身の外科医としてのビジョンをもつことがとても大切になってきております。 (1)初期臨床研修(2年) 平成16年度より2年間の卒後臨床研修が必修化され、現在では初期研修医の受入れは東大病院においては総合研修センターによって一括して行われております。当院では外科系各科が協力し、外科系をローテートしている研修医を対象に研修医セミナーを定期的に開催し、幅広い外科基礎知識や縫合・結紮などの基本的手技を習得する場を設けています。また各科での研修を通じて、大学ならではの質の高い医療を経験していただきます。詳しくは総合研修センターのページをご参照下さい。 (2) 外科専門研修(3年) 新研修制度導入以前から東京大学の旧第一外科(当科)、旧第二外科、旧第三外科、旧胸部外科、小児外科の5科は、外科専門研修について協力し合ってきました。その理由としては将来的に消化器外科専門医、心臓血管外科専門医、呼吸器外科専門医、小児外科専門医などを取得するために、まず外科専門医をあらかじめ取得しておくことが必要条件だからです。東大外科専門研修プログラムに参加している5科の関連病院を主体とした50以上の医療機関で外科領域における幅広い症例をまんべんなく経験できます。東京都内ばかりではなく、静岡から福島におよぶ関連病院の中から、できるかぎり症例や希望科など個々の希望に合わせて派遣先を決定しております。具体的な3年間のスケジュールや派遣先の病院などについては東京大学外科ホームページをご参照下さい。腫瘍外科・血管外科では腹腔鏡手術セミナーなど多数のセミナーを通じてこの期間に研修医がより多くの基本技術を習得し、また他の施設の研修医とも情報交換できる機会を設けております。見学やご相談は随時受け付けております。研修を希望の方はまずは当科までお気軽にご相談ください。 (3) 東大病院 腫瘍外科・血管外科 特任臨床医 (1年) 前述の5年の研修を終えて、最終的に外科の中での進路を決定します。大腸肛門外科または血管外科を希望の先生は、この1年間は特任臨床医(チューベン)となって大学病院の病棟チームの一員として多数の手術症例に携わることになります。またこの多数の臨床経験の中で専門的な知識を習得し、次の大学院に進むための院試を受験します。この一年間を通して当科の臨床に携わることで、最終的な入局が承認されます。またこれと同時に外科専門医を取得します。 他の病院や医局で初期臨床研究や外科専門研修を受けた先生も、この特任臨床医の段階から当科の研修システムに参加して頂くことが可能です。ご興味のある先生は是非ご連絡ください。 (4) 大学院 (4年) これまでに経験した外科手術から一旦離れて学位を取得すべく大学院に進学します。ただし実際には研究ばかりではなく、大腸肛門外科および血管外科の初診および再診外来に出て多くの患者に関わる他、大腸内視鏡検査、注腸検査、肛門機能検査および血管造影検査など多数の検査手技にも関わってその手技を取得していきます。4年間は長いようですが、実験や臨床データの収集にはかなりの時間を要するため、結果が出てそれを英文論文に仕上げてそれが英文雑誌にアクセプトされ、最後に学位論文にまで仕上げるとなると時間は多くありません。こうした過程を経て博士論文が受理されると博士号が授与されます。これは今後の指導的な立場での活躍に際して、各種専門医などと同様にとても重要なものです。またこうした論文業績が消化器外科専門医や内視鏡外科技術認定などの申請には必須であるという点も重要です。この時点でさらに海外留学にて研究を希望される先生は、以下の(5)の前に2年程度の海外留学にてさらなる研究を重ねていただきます。 (5) 後期外勤 (3年程度) 10年目を迎えてあらたに指導的な立場として当科の関連病院に後期外勤にでます。ここではさらに消化器外科専門医や心臓血管外科専門医を取得すべく多くの外科手術を主体とした臨床経験を積んでいただきます。さまざまな外科手術を経験する必要がありますが、伝統ある当科の関連病院は南は大阪から北は茨城まで非常に広い範囲に地方でも中心的な役割を担う総合病院を多数擁しておりますので、多くの症例経験が可能となっております。 (6) 助教 (オーベン) 十分に多くの症例経験を積んで、いよいよ大学における指導的な立場としてオーベンとなります。日々の外科臨床においては内視鏡外科技術認定医などのさらなる高度技能認定を目指すとともに、大学院生を指導し自らも臨床を通じて学会発表や論文投稿を積極的に行なっていきます。いままでの経験を下級医師に積極的に伝承していく役割です。 (7) その後の進路 その後の進路については希望に応じてさまざまな選択肢があります。 ・大学等の教育研究機関 さらに大学にて臨床医および教員として大学に残ってスタッフになっていく進路もあります。 ・関連病院にスタッフとして就職 より多くの先生方は当科の多くの関連病院にて外科部長やそれに次ぐ医長などのスタッフとして赴任して、後進の指導に携わります。 ・海外留学 前述のように(4)の大学院後にはいずれの時期においても留学が可能です。米国を主体とした多数の留学先があります。一例としてDuke大学、John Wayne Cancer Institute、Baylor大学、Yale大学およびWisconsin大学などがあります。 ・開業 最終的に外科の経験を活かしつつ、培った大腸内視鏡の技術、肛門疾患や炎症性腸疾患に対する治療経験、シャント作成、静脈瘤手術や血管造影などの技術をもとにして開業される先生方もおられます。 |